惣領冬実『マリー・アントワネット』悲劇の女王の誤解と嘘を暴く

 
『マリー・アントワネット』は、惣領冬実さんの漫画です。マリー・アントワネットの真実の姿とともに当時の衣食住などの風俗が見事に再現されています。漫画というよりも見ているだけで勉強になるという資料集のような作品。

『モーニング』で、連載されていました。現在は、連載は終了しています。



この作品は、衣装・建築・王宮儀礼などすべてを日仏の出版社で共同調査し、ヴェルサイユ宮殿が監修するという史上初の試みで出版されました。21世紀に発表された新しい事実をもとに描かれているため、これまでの伝記や漫画や映画では描かれてこなかった真実のマリー・アントワネットの姿を見ることができます。


ヴェルサイユ監修&惣領冬実さんのタッグで、衣装やインテリアの描写など、全てが絵画を見ているような壮麗な美しさです。そして、まるで肖像画から抜け出てきたかのような美しいマリー・アントワネットは必見!肖像画と違ってさまざまな表情を見せてくれるのですが、一つ一つの表情がため息がでるほど素敵です。


フランス語の題名“jeunesse d'une reine”というのは、“女王の青春“ということで、そのタイトルの通りこちらではマリー・アントワネット若かりし頃が描かれています。その後の革命など部分は描かれていませんが、この漫画を読んだ後で、次の起こる悲劇のことを想像するととてもつらい気持ちになります。


歴史研究においては、調査が進んで新事実が明らかになったり、ある説の出所を検証して信憑性を再評価したりすることがありますが、それにしても、従来のイメージとの違いがあまりにも大きいことに衝撃を受けます。マリー・アントワネットは優しくてかわいらしく、その夫であるルイ16世も非常に聡明な人です。新解釈の方は、二人の肖像画から受ける印象とイメージがぴったり合っているように思います。

「フランス革命」は、勃発から200年以上経った今でも、革命の日7月14日には毎年、ナポレオンが建てた凱旋門前で盛大なパレードを行うそうです。今でも革命時のスローガンとされた「自由・平等・友愛」 Liberté, Égalité, Fraternité「リベルテ、エガリテ、フラテルニテ」という言葉はフランス国家の理念として掲げられています。

このようなフランス国民にとって大変重要な歴史上の出来事「フランス革命の敵」としての象徴的な存在であったルイ16世とマリー・アントワネットが、必要以上に悪く言われるであろうことは容易に想像できます。悪評は後世に作られたともいわれていますので、やはり歴史は敗者には厳しいということなんでしょうか。さらに、マリー・アントワネットの場合、王妃であったころから、ゴシップの犠牲になっていたことも関係しているようです。残念ながら、いつの時代もセンセーショナルでドラマチックなセレブのゴシップというのは飛び交うものなんですね。

従来の小説や漫画、伝記などでは見たこともない本当の『マリー・アントワネット』に出会える貴重な一冊。おすすめです。


 マリー・アントワネット




マリー・アントワネットの嘘


『マリー・アントワネット』に興味を持たれた方には、『マリー・アントワネットの嘘』もおススメ。惣領冬実さんの歴史漫画の製作舞台裏を紹介した本です。綿密な調査を重ね、真実のアントワネットに向き合おうとする惣領冬実さんの真摯な姿が紹介されています。


さらに、こちらの方では、なぜ従来のマリー・アントワネット像が誤解と嘘で塗り固められたものになったのかについて解説されています。これまでの映画や小説などで描かれているいわゆる“アントワネット像”は、ゴシップの内容も混じったシュテファン・ツヴァイクの伝記がベースになっているとのこと。


シュテファン・ツヴァイクの『マリー・アントワネット』は、伝記というよりもどちらかというとフィクション小説に近いものだったようです。私も、間違って認識していることがいくつかあり、かなり衝撃的でした。


私の場合、こちらの漫画で受けた衝撃は、衝撃そのものが勉強となりました。歴史は伝える人の価値観・立場・視点によってとらえ方、表現の仕方が異なるということが、今更ながら再認識させてもらえたからです。同じ業績・人物でも味方が書いたら美化され、敵が書いたら悪口になる。ゴシップ記者が書いたら面白おかしくセンセーショナルに、小説家が書いたら波乱万象でドラマチックなストーリーに、読者を意識した演出になります。


私の大学での専攻は自然科学の分野でしたが、昔、大学の指導教官に「研究論文というものは、 “誰が”書いたかを意識して読みなさい」と指導されたことを思い出しました。分野が違っても同じことが言えるんですね。普段はついつい忘れていますが、これからいろんな本を読む際に念頭に入れておきたいと思います。


 マリー・アントワネットの嘘





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