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日本史のテスト・受験対策にもなるおススメ歴史漫画

 


日本史を勉強しているとたくさんの人物が登場したり、様々な事件が発生し、それぞれの関係を覚えるのが大変ですよね。これらを正確に理解していないと得点できないので、必死に勉強している人も多いのではないかと思います。

でも、歴史を舞台にしたマンガを読めば楽しみながら人物関係や出来事が楽々頭に入ってくるので、とても楽しく歴史の勉強ができます。しかも、一度読めば忘れないというのも大きなメリットですよね。

そこでこのページでは、日本史のテストや受験対策にもなるおすすめの歴史漫画を紹介します。


よしながふみ作『大奥』2021年に完結し話題の人気作


『大奥』は、男女が逆転した“大奥”を描いた漫画。女将軍を主人公とし、お世継ぎを残すために集められた男たちの大奥が舞台となっています。



隔月刊誌『MELODY』にて2004年から2021年まで連載されました。作者は、よしながふみさん。代表作は、『きのう何食べた?』『西洋骨董洋菓子店』など。西島秀俊と内野聖陽出演でドラマ化され、大いに話題になりましたよね。ストーリーの巧みさや心に突き刺さるような心情表現などよしながふみさんの人気の秘密だと思います。


『大奥』は、これまでの代表作を凌ぐ大ヒットとなっており、2020年12月時点でコミックスの累計発行部数は電子版を含めて600万部を突破しています。また、第5回センス・オブ・ジェンダー賞特別賞、第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞など数多くの賞を受賞しています。

センス・オブ・ジェンダー賞受賞作・候補作一覧1-18回|文学賞の世界

マンガ部門 | 第10回 2006年 | 文化庁メディア芸術祭 歴代受賞作品


1巻は序章で、物語の舞台は8代将軍吉宗(女)の時代。8代将軍のころには、“男名”の女将軍が当たり前。また、将軍職ばかりでなく、“男名”の女が、家督を相続し、政治を取り仕切っていました。しかし、聡明な吉宗がその状況に違和感を抱き、その秘密に迫っていく……という形で、一気に3代将軍まで時代がさかのぼります。そして、その秘密とは……。これ以上はネタバレになるので、やめておきます。


 全く関係ないかもしれませんが、名作『ポーの一族』の序章を思い出しました。時系列通りでないというのは、こんなにも興味を掻き立てられるものなんでしょうか。続きがものすごく気になってしまいますね。


 舞台は、あくまで“大奥”。フォーカスされる人物は、月日の流れとともに移り変わります。"大奥"という一見華やかに見える狭い異質な空間で繰り広げられる男と女、父と母と子の人間模様。人間の残酷な部分、欲深い部分もオブラートに包むことなくしっかり描写されます意地汚い人間の欲望や歴史の流れに振り回される登場人物たち。悲痛な叫びや生々しい本音を吐き出す登場人物たちに胸を打たれます


そして、大奥は不条理な場所でもあり、天下の将軍様と言えど、どんなに必死になっても報われないことも数多くあり……。むしろ、将軍だからこそ報われないのでしょうか?“将軍は徳川の世を存続させるための人柱”というセリフがありますが、この言葉が後々も、ボディブローのようにズシンと響いてきます。


 男女が逆転という突拍子もない発想から、なんだか一時的に注目を浴びているいわゆる“キワモノ”の漫画だと思ったら大間違いです。史実に基づいて練りこまれた綿密なストーリー、そこにフィクションを織り交ぜつつ展開されるため、今まで私たちが知らなかっただけでこっちの方が真実かも、と思わせるだけのパワーのある作品となっています。なぜ将軍が女になったのか、なぜ鎖国が必要だったのか、なぜ女将軍の存在が歴史の闇に葬られることになったのか、……などなどここには書ききれないほど数多くある綿密なストーリー展開に注目してください。


徳川歴代将軍の名前を全部言ってと言われたら、言えない人も多いのではないでしょうか。1代、3代、5代、8代、15代はほとんどの人が言えると思いますが、〇代は誰だったっけ?なんていうこともあるかもしれません。また、基本的には、直系の子どもが代々将軍職に就くことになっていますが、様々な理由から常に直系が後を継いでいるわけではありません。○○が○○の子どもで、○○が○○の孫で、○○が○○と腹違いの兄弟で……複雑な血縁関係を理解するのは大変です。


しかし、この作品を読むと、徳川の歴代将軍の名前を覚えるのはもちろん父親、母親、側室、側近に至るまで、家系図、人間相関図を自然と理解できるようになります。私も、桂昌院、月光院、天英院、天璋院など、何度覚えてもすぐ混乱してしまう超有名人たちがやっと整理できました(笑)。


さらに、教科書や年表にも載っている様々な出来事、生類憐みの令、赤穂浪士の討ち入り、江島生島事件……、桜田門外の変、安政の大獄……などなど、これら起こった時代や時系列を理解したり、それにかかわる人物、いわゆる教科書での有名人を自然に覚えたりできるようになります。


基本的に物語は歴史に沿って進んでいきます。しかし、男女逆転していることから当然と言えば当然なのですが、細かい人間関係、人物像はフィクションのものもあるようです。『大奥』では、心が洗われるような人格者から身の毛がよだつほどの悪人まで、さまざまな人が登場しますので、私は、特に人物像について興味が湧きました。『大奥』で概要を把握したら、後で史実と比較するのも楽しそうですね。興味が持てれば、歴史の勉強もはかどりそうです。
 

よしながふみさんは、手塚マンガも読んで育ち、人間の本質を見据えた作品に「残酷でエロチックなものをマンガで描いていいと学びました」と答えています。

第13回 2009|手塚治虫文化賞20周年


全くその言葉の通り、色と欲にまみれた残酷な大奥を舞台にした物語です。その舞台で、苦しみながら運命に立ち向かう登場人物たちから目が離せません。


大奥




里中満智子作・持統天皇物語『天上の虹』


『天上の虹』は、天武天皇の皇后で自身も第41代天皇となった持統天皇を主人公にした歴史漫
画です。コミックスにして全23巻で完結しています。作者は少女漫画の大御所里中満智子さん。




1983年に『mimi DX』で連載が開始し、途中掲載誌を『mimi Excellent』に移して連載が継続されました。完結には13年のブランクを挟んで32年かかっています。


主人公は、大化の改新の立役者として有名な中大兄皇子、後の天智天皇の娘として生まれた?野讃良皇女(うののさららのひめみこ)。後に、叔父にあたる天武天皇の妃となります。天武天皇と?野讃良皇女との間に生まれた草壁皇子が病気により薨去し、草壁皇子の子ども(つまり?野讃良皇女の孫)軽皇子(後の文武天皇)が当時まだ7歳であったことから、天皇に即位し、持統天皇となりました。


歴史上は、政治の才能に富んだ有能な統治者として知られる持統天皇ですが、『天上の虹』では、政治家としての悩みはもちろん、妻として母としての苦しみや葛藤と戦いながら強く懸命に生きる姿が描かれています。強くはないのに、強くあろうとした持統天皇の生きざまに心を打たれます


この時代、天皇の神聖さを保つため、近親婚がほとんどでした。おじと姪はもちろん、母親が同じでなければ兄弟でも婚姻関係を結べたり、姉妹で同じ人のところへ嫁いだり。今では考えられないですね。しかも、一夫多妻制。天皇の家系図とか人物の相関図がとても複雑になります。


壬申の乱とか、大津皇子の謀反とか、持統天皇の即位とか……誰がどうしてどうなったんだっけ?教科書だけでは、なかなか理解するのは難しいですよね。しかし、『天井の虹』を読めば、すっきりと整理でき、なんなら何も見ないで家系図まで書きながら、この人がこうしてあーしてこうなって……なんて人に説明することだってできるようになります


なぜこんなにしっかりと頭にはいるのでしょう?それは、作者が作品中に様々な恋愛ドラマや人間ドラマを展開させ、物語をよりドラマチックにしているからだと思います。創作が多く含まれているものの、作者のモットーにより、史実で明らかな部分(登場人物の生没年、各種法令・書物の成立時期など)は改変されていません。


「春過ぎて 夏来にけらし しろたへの 衣干すてふ 天の香久山」という和歌を詠んだ持統天皇。わたしが学生の頃に好きだった和歌です。『天上の虹』を読む前は、この歌からしか持統天皇の人柄を忍ぶことはできなかったのですが、『天上の虹』を読んで“さらら”がすっかり持統天皇になってしまいました。


『天井の虹』が気に入った方は、同じく里中満智子さんの作品で『長屋王残照記』と『女帝の手記-孝謙・称徳天皇物語』もおススメです。


『長屋王残照記』は、父は天武天皇の長男高市皇子、母は持統天皇の妹である、持統天皇の甥、長屋王の物語。『女帝の手記-孝謙・称徳天皇物語』は、最初にして唯一の女性皇太子となった阿倍内親王(孝謙=称徳天皇)の物語です。


 天井の虹




『信長協奏曲』ドラマ化・アニメ化もされた人気作漫画


『信長協奏曲』は、戦国武将として最も人気が高い織田信長を主人公とした物語です。作者は、石井あゆみさん。




『ゲッサン』で2009年から連載中。第57回小学館漫画賞少年向け部門を受賞。「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」では7位。2016年9月時点で累計発行部数は450万部を突破しています。その高い人気を受けて、ドラマ化・アニメ化もされています。

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あらすじとしては、高校生のサブローが、塀から落ちて戦国時代にタイムスリップしてしまい、信長自身に頼まれて身代わりとして生きていくことになるというお話です。なぜ、信長の身代わりができたのかは、織田信長と顔、声、体格などが瓜二つであったからなのですが、その他はいたって普通の男子高校生です。


肩の力が抜けているというか、なんか脱力しているというか……・包囲されても「あーもう全然言うこと聞いてくんないよー」「どうしましょ」とか、家臣に頼みごとをされても「うん、わかったいいよ。」「がんばってね」などとひょうひょうとした受け答えをします。また、現代っ子らしく残忍なところもありません。これまでのイメージとは異なる信長なのに、なぜか史実通りの“只者ではない”信長になってしまうので「そうきたか〜」と感心したり納得したり。ちなみに、サブローは、あんまり歴史に詳しくないため、本能寺の変で信長を殺すのは「あいださん」だと記憶しているところがちょっと笑えます。


信長はちょっとのんきですが、周りもそうだというわけではなく、戦国時代らしく緊迫した場面も腹黒い人たちも登場します。また、実は秀吉の思惑は○○で、明智光秀は本当は○○だったなど、かなり大胆なフィクションも織り交ぜられています。しかし、表面上は教科書通りの流れになっているため、フィクションだと思う反面、物的証拠が残ってないだけで水面下では実はこんなことがあったのかもしれないなとあれこれ想像したり、あっと驚く展開にハラハラしたりしているうちにすっかりストーリーに夢中になってしまいます


戦国時代と言えば、味方になったり、敵になったり。どうして戦うことになったのか?どうして仲良くなかったのか?とても複雑ですよね。しかも、歴史の教科書では、人物名とかその関係だけ、簡潔に書いているだけなので、読んでもはあ〜そうですかーとなるだけです。歴史の面白さなんてわかりません。しかし、この漫画を読めば、ストーリーを追ううちに、出来事の時系列(年表)が頭に入ってきます。数多くいる戦国武将や家来の名前も自然と覚えることができます


注目のクライマックス、信長の最期と言えば超有名な本能寺の変ですが、こちらのほうも教科書上の展開は知っているものの、どんなあっと驚く展開を見せてくれるのか???今後の『信長協奏曲』の展開に目が離せません。戦国時代に興味がある人もない人にもお勧めです。

 信長協奏曲




あの東村アキコさん初の歴史漫画『雪花の虎』


『雪花の虎』は、東村アキコさんによる歴史漫画。『ヒバナ』にて2015年から2017年まで連載された後、『ビッグコミックスピリッツ』へ移籍して2018年から2020年まで連載されていました。コミックでは10巻で完結しています。




東村アキコさんといえば、超のつくヒット作が数多くあることで有名。『海月姫』で、第34回(平成22年度)講談社漫画賞少女部門を受賞。『東京タラレバ娘』で第6回ananマンガ大賞の大賞受賞。

自身の半生を描いた『かくかくしかじか』で第8回マンガ大賞、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。『海月姫』は、テレビアニメ化、実写映画化、テレビドラマ化されています。また『主に泣いてます』『東京タラレバ娘』『偽装不倫』『美食探偵 明智五郎』もドラマ化されました。


『東京タラレバ娘』は社会現象になるほどの衝撃作でしたよね。2020年10月時点で累計発行部数は520万部を突破しています。鋭い切り口かつ作者の愛のこもった東村アキコさんらしい作品で、大ヒットも納得の面白さです。


1巻を読んだ時に受けた衝撃波は文字で書き表すことができません!ご自身がタラレバ娘だと思う人には、ホラー漫画として(笑)、それ以外の人には女の人生指南書として、読むことをお勧めします。現在、令和となりタラレバ娘が“令菜“に交代して、続編が連載中です。


漫画好きとしては、描き足らないくらい面白い作品&超魅力的な漫画家さんなのですが、脱線するのでこの辺でやめておきます。


あの東村アキコさんが、初となる歴史漫画作品を描いたということでさっそく読んでみました。『雪花の虎』は、戦国武将・上杉謙信が女性であったという説に基づいて描かれた作品。降る雪のように優しく、舞う花のように美しく、哮る虎のように勇ましい『雪花の虎』のように戦国を生き抜いた女上杉謙信の物語です。


とにかく優しく美しく勇ましい上杉謙信が魅力的。史実をうまく絡めてあるので、やっぱり女だったにちがいないと思わせてくれます。謙信は、東村アキコさんが生み出す主人公としてはあまり登場しないキャラですが、そんな謙信の周りのわき役は、作者テイストのキャラも登場してファンを安心させてくれます。また、予想もしなかった人たちの恋の物語が展開されるのでかなり衝撃的。ファンでなくとも見逃せません。


内容だけでも十分面白いのですが、作者自身が歴史漫画のシリアスな雰囲気に耐えられなくなってか、歴史が苦手な読者のことを心配してか、途中で作者がフォローのためにチャチャを入れて一休みさせてくれます。作者さんの気遣いがあるので、10巻があっという間に終わってしまうのかもしれませんね。


題材が、女上杉謙信だったので、最初読んだときは、かなりの長編になるだろうと思っていたのですが、10巻で終わってしまいました。実は、10巻は当初の予定通りだったとのことなんですが、知らなかった読者は私みたいにびっくりした人もいるのではないでしょうか?謙信と信玄にポイントを絞った形で物語が進んでいき、第四次川中島合戦でエンディングを迎えます。


例えるなら、大河ドラマ一年分の総集編のような形かもしれません。謙信や歴史に詳しくない人には、面白かった!!となるのですが、歴史好きの人、謙信マニアの人には、編集担当者(この場合は作者)に対して、え〜あの見どころを省いてしまうの?あの人(歴史上の結構重要人物)はどうなった?なんて思ってしまうかもしれません。しかし、大河ドラマの総集編と思ってみたら、10巻に面白くまとめるのはかなりの至難の業。いいとこどりのダイジェストになってしまうのはしかたないですね。


この作品は、東村アキコさんが、(おそらく歴史は苦手だと思われる)ファンに向けて、歴史に興味を持ってもらおうと描いたのではないでしょうか?これを読むと、自然と歴史に興味を持つようになり、自分自身で謙信について調べたくなります。そう思った時点で、東村アキコさんの策略にはまっているのかもしれませんね。女上杉謙信の人生・一挙振り返りダイジェスト『雪花の虎』おススメです!


雪花の虎




『風光る』新撰組が見た幕末のドラマ


『風光る』は、新選組が関わる歴史がベースとなった漫画。作者は、渡辺多恵子さんです。



小学館の『別冊少女コミック』にて1997年から連載を開始し、その後掲『月刊フラワーズ』に移し、2020年7月号まで連載されました。完結まで23年という少女漫画としては珍しい長編漫画です。全45巻。第48回(平成14年度)小学館漫画賞受賞しています。


『ファミリー! 』『はじめちゃんが一番! 』の代表作で知られる渡辺多恵子さん。特に、『ファミリー! 』は中学校の時初めて読んで、こんな漫画があるのかとちょっとした衝撃を受けました。少女漫画の恋愛ストーリーというよりも、人間愛のようなものにフォーカスしているような気がします。悪いところも、いいところもたくさんあって、全部ひっくるめて魅力的な人間らしいキャラクターがたくさん登場します。この作者さんにかかれば、日常の些細なできことが心を動かされるエピソードに変わります。


『風光る』は、主人公の神谷清三郎(富永セイ)が、15歳で壬生浪士組(後の新選組)に入隊志願するところから始まります。実は、神谷清三郎は女なのですが、父と兄の仇討ちのため、男装しており……。ネタバレになるので、この辺でやめておきます。気になる方は読んでみてくださいね!


主人公は、オリジナル(モデルがいたという説がありますが、私には真偽のほどはわかりません)ですが、沖田総司、土方歳三、近藤勇……歴史に詳しくなくても誰もが知っている有名どころはもちろん、新選組に詳しい人なら知っている剣豪・永倉新八、無敵の剣・斎藤一などなど……実在の人物がたくさん登場します。

主人公の神谷清三郎は、沖田総司の愛弟子として深い関わりを持つことになります。そのため、読者は、主に沖田総司が関わっていく幕末を新選組の始まりから終わりまでを見ていくことになります。そもそもの新選組の始まりは、新選組となる前の壬生浪士組が形成された文久3年(1863年)。そして、戊辰戦争最後の戦い箱館戦争での土方歳三の戦死をもって、新選組は旧幕府軍とともに終焉を迎えます。


新選組、幕末と聞いただけで、なんとも言えず物悲しく苦しい気持ちになります。


そして、こちらの物語はフィクションであってフィクションでなく、史実に忠実に物語が進んでいきます。残念ながら、誰がどんなに頑張っても、苦しんでも史実は一切変わりません。読者は、主人公の前向きなところ、頑張っている姿に何とか救われながら、幕末を追っていくことになります。『風光る』は、人と人とのつながりや気持ちの部分を大事にして描かれているため、感情移入してしまって目が離せなくなります。少女漫画らしく恋愛にもフォーカスしていますので、少女漫画が大好きな人はさらに楽しめると思います


幕末は苦しく激動であるからこそ興味深いのですが、人と人が、幕府と朝廷が複雑に絡まりあい様々な出来事が起こります。教科書や年表を見ると、……新選組が結成して、池田屋事件があって、蛤御門の変があって、薩長同盟が結ばれて、大政奉還があって、戊辰戦争があって……。教科書で習っただけだと、誰が何をどうしてこうなったんだっけ?どっちが先に起こったんだった??なんてことになりますが、『風光る』を読んでおくと出来事の時系列や因果関係などの大筋がすっきり整理されて頭に入ってきます。


もちろん、人物描写や細かい人間関係などは結構脚色しているようです。また、漫画だからというだけでなく、歴史的な出来事、事件の描写でも学者さんの説や解釈の仕方で大きく異なってくるということはよくあること。『風光る』で概要を把握したら、後で史実とされている事柄を確認するのも楽しいのではないでしょうか?


史実を調べたいと思ったとき、業績を美化したり、人物を面白く脚色したような小説を読んでも、あまり参考になりません。そんなときに、剣豪・永倉新八が自ら語った内容がわかると聞けば、新選組に興味を持っている方は心躍りますよね。


新撰組二番隊組長という幹部として数々の修羅場をくぐり抜けてきた永倉新八。『新選組顛末記』では、新撰組の内情や池田屋事件の話などが永倉新八によって淡々と語られているのですが、さすがに組織の中枢にあった人物の言葉は重みが違います。かなりの迫力です。




『地図と読む・新選組顛末記』では、三十九点の地図とともに、当時のことがより詳しく理解できるようになっています。また、明治八年頃に、永倉新八自身が書き記した回顧録も出版されています。


 『風光る』で幕末に興味を持たれた方は、倒幕派からの視点の作品『おーい竜馬』『おーい竜馬』も併せて読まれるとさらに面白いと思います。


 風光る




武田鉄矢原作『おーい竜馬』倒幕側から見た幕末のドラマ


『お?い!竜馬』は、幕末の英雄・坂本龍馬の生涯を描いた漫画です。原作は武田鉄矢さん、作画は小山ゆうさん。『少年ビッグコミック』で1986年に連載を開始し、後継誌『ヤングサンデー』で1996年まで連載されました。




 武田鉄矢さんと言えば、司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』の影響からバンド名に「海援隊」と名付けるほど、坂本龍馬を敬愛していることで有名。なんとご自身が、龍馬が亡くなった年齢(33歳)になった年(1982年)に、海援隊を解散しています(後に再結成)。武田鉄矢さんの尊敬と愛情がたっぷり詰まった漫画となっています。


『竜馬がゆく』といえば、総発行部数2500万部超。坂本竜馬の奇蹟の生涯を壮大なスケールで描く、司馬文学の金字塔です。


司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』のファンでもある武田鉄矢さんが原作のため、『お?い!竜馬』も『竜馬がゆく』の龍馬のイメージそのままとなっています。龍馬と言えば、情に厚くて強い、男にも惚れられる男の中の男。もちろん女にもモテる。奢らず自然体。日本の龍馬像は、『おーい竜馬』と『竜馬がゆく』が作ったといっても言い過ぎではないかもしれませんね。


龍馬は、誰もが知っている有名な幕末の英雄。薩長同盟に尽力したということは有名ですが、カッコイイイメージばかりが先行して、複雑な幕末の歴史と絡めて理解している人は意外と少ないのでは?『お?い!竜馬』を読むと出来事の時系列や関連する人物たちがすっきり整理されて頭に入ってきます


『お?い!竜馬』では、1835年11月15日に龍馬が生まれてから、1867年に33歳で亡くなるまでが描かれています。ちなみに、龍馬の幼少時代は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』では描かれていません。1835年生まれですから、1853年ペリーが来航したときは、龍馬は18歳。その後、日米和親条約締結、松下村塾が開塾、安政の大獄、桜田門外の変、池田屋事件、薩長同盟……そして、1867年大政奉還が行われた年に暗殺。激動の幕末の中生きていきます。


漫画では、大筋としては歴史に忠実に物語が進んでいきます。作者によると、史実にはないけど、もしかしたらこういう可能性もあるかもというぎりぎりのラインのフィクションを交えたとのことです。また、主人公の龍馬だけでなく、幕末の志士など脇役の魅力も際立っているのもこの漫画の魅力。非業の最期を遂げていく幕末の志士たち、また龍馬の最期もわかっているとなると物語が進んでいくのはつらいところではありますが、それでもページをめくる手がとまりません。


この作品を読んで坂本龍馬に興味が出てきたら、後で史実に基づいて書かれた本でどれが事実でどれがフィクションか確認するのも楽しいのではないでしょうか?


ちなみに、龍馬、武市半平太、岡田以蔵が幼馴染であったというのを史実だと信じている方も多いと思いますが、この設定は、“こういう可能性もあるかもというぎりぎりのライン”ということです。


史実を調べようとするとき、一次情報よりも貴重なものはありません。桂浜にある坂本龍馬記念館には、坂本龍馬の資料がたくさん展示されています。高知県立坂本龍馬記念館|高知県立坂本龍馬記念館


こういった貴重な資料は一般人だとなかなかアクセスが難しいですが、記念館や博物館で生の資料を目にできるのはうれしいことですよね。数ある展示品の中で、私が一番印象に残ったのは、龍馬から姉乙女へ向けて書いた直筆の手紙でした。何より、龍馬が血の通った生きた人間であったことが実感できましたし、楽しい旅の報告として書かれた手紙は、気取ったところがなく、龍馬の人柄や乙女との関係がしのばれました。漫画でも小説でも乙女は“龍馬のよき理解者であった”という描かれ方をしていますが、なるほどとうなずけます。



上の写真は重要文化財の梅椿図(血染掛軸)です。龍馬が暗殺された部屋の床の間に掛かっていたもの。画像が悪くて申し訳ありません。表具の下部に点々とある汚れのようなものは、実は、血の飛び散った痕です。当時の生々しい現場が伝わる資料の一つです。


高知市の桂浜には、太平洋を見つめる総高13.5 mの立派な坂本龍馬像が立っています。



桂浜。太平洋を始めて見た私は、激しい荒波にかなりびっくりしました。この波を見て育った龍馬があんな漫画のような飄々とした人物だとはちょっと思えないところもあります(笑)。

勝海舟の弟子だったという坂本龍馬ですが、晩年の勝海舟の回想録等をまとめた本が出版されています。




幕末の歴史に詳しくない人にとっては少々難しいと思うかもしれませんが、『おーい!竜馬』で幕末の予習(?)しておけば、すんなり読むことができると思います。勝海舟と言えば、世界に誇る江戸の無血開城の立役者。幕末の歴史ドラマや小説などでも必ずでてきます。これを読むとそのイメージ通り、聡明で豪胆な人物であることがしのばれます。そして、その勝海舟が頻繁に話題に取り上げ、絶賛するのが、西郷隆盛と横井小楠。こんなにすばらしい人物がいたのかと興味が湧いてきました。こうやって、どんどん楽しく興味の幅が広がるのも、『おーい!竜馬』という漫画のおかげかもしれません。

 おーい竜馬




森本梢子作『アシガール』・“押し“で歴女への扉が開く・羽木九八郎忠清の実在モデルとは?


『アシガール』は、タイムスリップ戦国時代ラブコメ。作者は、森本梢子さん。



『Cocohana』にて2012年1月号より連載。12巻で第1部が終了し、その後も新章を連載中。2020年12月時点で累計発行部数は350万部を突破しています。ドラマ化もされました。2021年タイムスリップ作品で好きなドラマ 人気ランキングでも一位に選ばれています。

300人に聞いた!タイムスリップ作品で好きなドラマ 人気ランキング ベスト10!

森本梢子さんは、あの大ヒットドラマ「ごくせん」の原作者です。森本梢子さんといえば、超綺麗でカワイイ絵柄。それでいて、少女漫画から半分はみ出したちょっと笑える愛嬌のある登場人物たち。トンでも展開にも関わらず、妙にすんなりなじんでしまう空気観と独特のテンポ。森本ワールドの熱烈なファンが多いというのも納得の人気漫画家さんです。


『アシガール』ですが、主人公から脇役に至るまで、実在の人物はあまりでてきません。ほんのちょっと出てくるくらいです。つまり、登場人物を覚えたり、戦いの時系列やお城の地理を理解したりしても、残念ながらテストに役立つことはありません


しかし、『アシガール』をきっかけに“歴女”扉が開くかも。というのも、『アシガール』にでてくるカッコイイ若君・羽木九八郎忠清に夢中になってしまう女性が激増中だからです。この若君は、カッコイイという一言で表すことができないくらいビックリするほどパーフェクト。見た目はもちろん、中身はそれ以上にカッコイイ。もし実在していたら、歴史上の人物ランキングで、織田信長、真田幸村、坂本龍馬……などの数々の強豪を大差で突き放し、ダントツ一位になるんじゃないかという超ハイレベルの人物です。


ネットでも、若君のモデル武将は誰だ?と検索する人が多いようで、検索エンジンに、“羽木九八郎忠清”と入力したら、次の候補ワードとして“実在”が上がってきます。また、実際に調べたことをブログに書いたり、ツイートしたりしている人もいます。


若君が生きた年代や起こった出来事、活躍した戦いの戦況、若君の鎧、お城の外観や地理情報etc.ありとあらゆる情報から、これは、○○の戦いで、ここは○○城で、若君の○○の経歴からすると〇×〇×がモデルではないかとか、性格や外見は×〇〇×がモデルではないか、〇巻でつけている鎧は、〇×〇×〇のもの……云々。誰もが知っている有名武将から知る人ぞ知るというちょっとマイナーな武将まで、その詳細な調べっぷりが素晴らしく、並々ならぬ熱意を感じます。


“歴女”というのは、歴史好き、歴史ファンの女性を示す略語で、歴史そのものというより、歴史に登場する人物を“推し”として追っかけをする女性たちのことですが、『アシガール』を読んでしまったら、若君押しとして、すっかり戦国時代に詳しくなってしまいそうですね。


若君は正統派王道キャラですが、『アシガール』は、美男美女がたくさん出てくるキラキラした少女漫画ではありません。唯は、少女漫画の主人公としては珍しく、素っ頓狂でちょっとお気楽なギャグのかたまりみたいなキャラですが、愛嬌があります。馬糞にまみれていても、アイーンな顔をしていても……本当に愛嬌あるのかな (笑)???とにかく本気で笑かしてくれます。


タイムマシンや不思議道具担当の唯の弟・尊(ドラえもん!?)は、賢くてとても唯の弟とは思えません。密かな私のお気に入りは、厳しくて強くて、懐が深いおふくろ様。その他、ここには書ききれないくらい魅力的なキャラがたくさんたくさん出てきます。そして、個性的なキャラがキャラたるゆえの言動やエピソードが盛りだくさん。ガツンとぶち込まれるギャグに大爆笑させられたり、ほろりとさせられたり、えっ!!と驚いたり、キャーーーッッッ!!!と悶絶したり。キャラたちと一緒に百面相することになりますので、読むときは決して人前では読まないように注意してくださいね(笑)。


本来なら、面白さを説明するためには、少しあらすじに触れておくべきところかもしれないところですが、念のためやめておきます。この漫画には、読まないとわからない面白さがいっぱい詰まっているので、是非一度手に取って読んでみてください。少女漫画ってちょっと苦手だと思っていた人も少女漫画のイメージがかわるかもしれません。でもやっぱり少女漫画ちょっと……という方は、期間限定無料で読めることもあるようですので、その機会を狙ってみてくださいね。


歴史ものは面白いけど、哀しい出来事も多いので、読んでいてつらくなることもありますが、『アシガール』の場合は読めば気分↑↑、元気がでてきます。気分が沈んでいる時に読んだら、ものすごくいい気分転換になりますよ。


一巻から面白いですが、巻が進むにつれて面白さがどんどん加速していきます。勉強になるかどうかは、読んだ後の自分次第ですが(笑)、読んでおいて損はない『アシガール』おススメです。


 アシガール



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